旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
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昭49年(1974)5月
伝統産業新製品試作研究報告書  京都府商工部
研究作品名 御厨子
研究テーマ 新様式による御厨子の開発研究
研究団体名 京都府仏具(協)青年会
研究責任者名 米澤正文  山田文雄
研究の特徴 伝統的な御厨子を現代のデザイン感覚で見直し、団地または一般の現代住宅にマッチした、実用的のも室内装飾にもなる工芸品として施作したものである。
 
昭和50年(1975)8月9日(土) 京都新聞
 
    京仏具を一貫製造恵  
 
    京仏具の若手職人グループが一貫製造を目指して『協同組合仏具工芸会』を結成、八日、京都市下京区の京都グランドホテルで創立総会を開いた。
 京仏具は、木地製作、彫刻、飾金具、漆塗り、金箔など製造工程ごとに分業が行われているため、それぞれの職人さんどうしの連携は薄く、問屋からの注文をこなすだけという形態が普通。新しい京仏具組合はこうした昔ながらの取引形態を打破、それぞれの部門の職人さんが集まって協同組合を結成、共同受注をして完成品まで一貫製造しようというもの。
  同組合には、二十七才から四十才までの若手九人が参加、初年度約千五百万円の売上を見込んでいる。米澤正文新理事長は『現在は業界内に抵抗もあるが、組合を作ることによって受注の安定を図っていきたい。将来は団地を作って共同事業を拡大したい』といっている。
 
   
 
昭和51年(1976)5月1日(土) 中小企業振興新聞
   全国出荷額の八十% 
 
     紳仏も通じぬ不況   
     
    ちょうど東西本願寺をとり囲むようにして、京都市下京区近辺に約二百の神仏具業者がのきを並べている。ここが全国的にも名高い京仏具の“ふる里”である。
  神仏具業者だけあって、これまで神仏のご加護が厚く、強い不況抵抗力に支えられて高度成長を満喫してきた。地元金融筋でも『従来から、不況なら神仏具業者をねらえ、というのが京都金融業界の常識だった』というほどである。 
 
 
ところが、今回の長期不況は神様、仏様にとってもこたえたようで『五十年の出荷額は前年比で三十%程落ち込んでいる』(地元業者)と肩をおとしている。
 三百の神仏具業者といっても、簡単な組み立てをするだけの問屋も含まれており、製造業者となると二百社ほどになる。それでも現在の出荷額は四十億円程度であることから、一業者当たりの平均出荷額は年間二千万円という勘定になる。業者の規模は大半が二-三人の零細で占められている。それでも京仏具は、仏壇だけに限れば全国のシェア二十%程度だが、寺などへ納める緒仏具となると、さすがに総本山が京都に位置しているだけあって、全国出荷の八十%を抑えている。しかし、紳仏具業界は、内部に目を転じると実に複雑である。木地製作から始まり、屋根、須弥壇、木彫、漆塗り、ロイロ、蒔絵、金箔、飾り金具、それに最後の組み立てと多くの工程に細分化している。しかも、個々の工程に高度な熟練技術を要求される専門業者であって、合理化が難しいのが実情である。
 
 
  後継者の育成が問題   
   
    このため、多くの業者が後継ぎ問題で頭を痛めている。工程が細分化し、それぞれの業者が家内工業的要素をもっているため、後継者をかくことは十分懸念される。いずれの工程の専門業者を失っても、影響は業界全体に波及だけに、後継者不足は業界にとって深刻な問題である。すでに屋根師の数が減少しており、最近では後継者問題が現実問題としてクローズアップしてきている。
 このような情勢下で京都府仏具協同組合(理事長・若林正夫氏―若林仏具製作所社長、加盟275業者)が対応策を模索しているが、さらに業界の共同化を推進し、体質改善を促進しようと、昨年十月に従来から任意組合で青年会活動を行ってきた若手グループが九社で協同組合京都仏具工芸会(理事長・米澤正文氏)を結成した。これは、受注、資材購入、生産などの共同化事業に取り組もうというものだが、互いの専門技術のワクを拡大していき、一貫作業ができる体制づくりをねらっている。六−七月には下京区西中筋通六条下ルの事務所で展示会を催すことを予定するなどPR活動も展開していき、『共同受注が軌道に乗れば、他の業者へも発注していきたい』としている。(米澤理事長)としている。又アフターサービスを強化するため、『仏壇仏具の110番』を設け、補修などの事業にも取り組むことにしている。
 
     
  12社で工場団地建設   
   
     紳仏具業者は昨年初めて、減少に加え価格の後退とダブルパンチにみまわれたことから、インテリア部門など他分野への進出意欲に目覚めはじめているようだ。これまでには、サイドボード付きの仏壇などが試作されている程度だが、それぞれの業界が高度な専門技術をもっているだけに、関連産業への進出意欲は根強い。また、現在、東山区山科で、12社が工業団地を建設しており、年内にも数社が稼働を始める。このように長い伝統に支えられてきた京仏具業界も、近代産業へと、脱皮を試みる動きが目立ち始めた。(京都)  
     
 
昭和52年(1977)1月25日(火) 京都新聞
 
     京の仏具 はばたく9人  
   
    京仏具若手技術者九名が手を結び、共同受注、共同生産を目指してつくった京都仏具工芸会(米澤正文理事長)が、今年2月で創立満3年をむらえる。伝統産業ではかってない試みだっただけに、その動向が注目されていたが、同工芸会の受注高はこの3年間で何と五倍増。今年1年間の売り上げは八千万を超えるものとみられている。『金儲けより互いの技術向上と、お客さんに喜んでもらえる仏具作りを心がけてきた』とリーダーと米澤さん。
 長期不況に加えて他産地の攻勢や後継者に悩む京の他の伝統産業からも同会の行き方は新たな関心を呼びそうだ。
 
 
  京都仏具工芸会のメンバーは、米澤さんを含めて木地部門わ2人、漆塗り三人、錺金具、金箔、木彫、仏師各1人の計9人。33歳から最年長で40歳という若手ぞろいである。京仏具に従事する職方は各部門合わせて約270人に上がるが、他の伝産業界と同様、これまで職方同士のつながりはほとんどなく、個々に問屋からの注文をこなすだけだった。米澤さんらのグループはそうした昔ながらの取引形態から脱皮して、共同で受注し、家庭用仏壇や寺院仏具の設計から製造まで一貫した生産体制をとっているのが特徴だ。
会の発足は49年2月、オイルショック後の不況で地元の問屋から回ってくる仕事はめっきり減り、他産地の攻勢もあって京の仏具業界自体の先細りが懸念される中で、まず受注の安定をはらるため米澤さんら気の合った職方仲間が立ち上がったわけ。
 
   1年半後の50年8月には同会を協同組合にして組織を強化した。この間の推移を組合の受注高でみると、初年度の49年は1千万だったが、50年は2300万円、51年は5千万円にも上がり、今年1年間の共同生産高は最低に見積もっても8千万円は軽いという。同業者によっては石油ショック以前より仕事量が3割もダウンしたというのに比べ、まるで不況知らずの勢いである。
 米澤理事長の話だと、組合へ発注してくるのは7割までが他府県の問屋だ。中には京都からいったん名古屋、彦根等の他産地へ流れていた仕事を取り戻したケースもあり、これまで地元問屋筋ではほとんど取り扱われなかった振興宗派の仏具製作も引き受けるなど、新規の需要もかなり開拓した。
 
   
  『組合として特別なPRもしていないのに--』と、仲間内でも予想以上の反響に驚いているが、米澤さんや専務理事の矢島さん(漆塗り部門)らは『とくに小規模の問屋からは一括注文できるから、職方回りの手間がはぶけると喜ばれている。それに品質、価格、納期の点でユーザーに十分納得してもらうような仏具ずくりを目指す私達のひたむきな姿勢に共感してもらったのでは---』と、受けとめる。  
 
たとえば、組合に注文が入ると、それぞれの工程でどの程度日数がかかり、原材料費、手間賃はいくらかかるかなど、原価計算を行って、全員で見積書を作成する。担当部門の製作は各自の仕事場で、組み立てと最終の仕上げは組合の事務所でやるという段取りだ。組合員それぞれの厳しい目が光っているから、だれもが決まった日数内に最高の物をつくろうとがんばる。そうして互いに研鑽する中で自然と個々の技術もレベルアップしてきたという。
 
     米澤さんらは今後の目標を仏具の工芸団地ずくり、さらに次代の後継者を育成する事業への取り組みに置いているが、その一方では昨年から地元の仏具屋とも積極的に交渉をもち始めた。工芸会として発足した当時、『職方だけが集まって注文をとり出したら、これまで付き合いのあった問屋から仕事を回してもらえなくなるのでは---』と不安がる声も多かった。しかし、実際にフタを開けてみると、組合を経由せず、個々の組合員へ従来通り注文してくる問屋は後を絶たなかった。

   現在、進めている地元の問屋との話し合いを通して、『たとえば他産地に大半のシェアを奪われた家庭用仏壇について、どうすれば再び京都に引き戻せるかなど、互いのたちばから意見を出し合い、その可能性をさぐり出したい』と、米澤さんらは願っているわけだ。旧来の問屋まかせという取引形態にあきたらず、グループをつくって飛び出した京都仏具工芸会が、こんどは業界全体の地位向上に一役買おうという。工芸会の発足以来、支援を続けてきた行政や金融きかんの鑑定者も『京仏具だかりでなく、低迷している刺激剤になれば---』(京都市伝産課・西口光博係長、京都信用金庫業務本部・住里三郎課長)と、米澤さんらグループの今後の活動に期待をかけている。
 
   
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