旧社名 (有)米澤神仏具製作所  
     
容子経歴容子日常生活容子日記
  昭和六十二年  7月〜9月 11月〜12月
  昭和六十三年  1月〜3月    
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  平成七年 1月〜3月  4月〜5月    
  平成八年 4月〜5月    
  平成十三年 2月〜4月    
  平成十六年 10月〜12月    
  平成十七年 1月〜12月     
  平成十八年 1月〜9月
  容子の死の前後を振り返って
【日記の原本】
  第2回目の日記 平成二年五月〜平成八年迄 短歌を始める
  • 平成三年一月
    正月の 感慨も無く 欧す姑 
    お節食べさせ 年賀状見せ

    我が家に 居ながら姑は 帰るとい  
    京都に居ながら 京都に帰ると

  • 三月
    配達の バイクの音の すぐ消えて 
    受験の合否 見ずともわかり

    封開けて 合否の二字 目を射りて  肩の重荷 おろして楽し

    封開けし 合格の文字 飛び込みて  胸の高鳴り 歓喜に変わる

    末っ子の 受験終えたり 三人の  この受験より 卒業せし春

  • 四月
    スーツ着て 今日から 花の女子大生  
    歩く姿の まぶしき娘

    夫のほほ こけたる様子 気になれど  
    口出せず 背中に詫びけり

    同室の 縁となりて 数ヶ月 
    別れ寂しき 退院の刻

    若いのに と言われて辛く 我が事の  出来ぬ身なれど 笑みを忘れず

    報われる ことの少なく歳重ね  丸くなるゆく 姑の背中は

    月一度 病に休み あるならば  母・妻・嫁を こなせるものを

    雲仙の 噴火によって 生きる糧  家 故郷も 一瞬に消え

    普賢岳 何を怒りて 島原の  民に当たるや 鎮まりてあれ

    地球上 天変地異で 揺れ動き  ノストラムスの 予言かすめる

    災害の 無き地に嫁ぎ 二十余年  哀れを知らぬ 我もおののく

  • 六月
    雨降りに 子らの登校 気にかかり  北山煙る 病窓を見ながら 
                      
    足なえて 車椅子にて 励む彼 まだ高校生の 吾子の歳なり

    オペ重ね 傷だらけの 人生を  冗談交わし 傷を見せ合う

    つまずいて 又つまずいて オペ延期 
    いつ訪れる 釈放の日

    梅雨なのに 一足跳びに うだる夏  
    修理終わらぬ クーラーを恋う
       
    娘にも 彼氏できたと 聞かされて 
    嬉しいような 気になるような

    姉娘 彼氏いるよと 妹言う  嬉しいような 気になるような

    病室で ざわめきの中 昼寝する 消灯の闇に 目はさえわたる 

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  • 七月
    ふるさとの 家に待つ父母 今は亡く  逢って見せたい 子らの成長

    ふるさとの 家に待つ父母 今は亡く 子らの成長 逢うて見せたや

    磯の香や 海女の口笛 盆踊り  汐風涼し ふるさとの夏

    七夕は 彼岸の母の誕生日 彼の岸で  父よ花束 プレゼントせしや

    回重ね 改めて見る オペ室は 
    心落ち着く 黄緑の壁

    てんてんと 注射の後の 細い腕  
    よくぞ耐えたと いとおしむなり

    手術後は 赤子と何ら 変わらねど 
    行き届きたる ナースの看護

    ちょうちんの 灯りともりて 
    宵山の  はやしの音に 下駄の音合う

    祭り過ぎ 梅雨明けやらぬ 庭眺め  娘の浴衣の ほつれ縫いおり

    我在るは 無数の人の お陰なり  吾命にて 我のものにあらず

    灼熱を 浴びた庭木に 水まけば  自立なり 土や草花

    灼熱を 浴びし庭木の 山水に  土の香・花の匂 漂いはじむ

    灼熱を 浴びたる庭に 打ち水し
    匂い漂う 土や草花

    風鈴の 音も絶え絶えに クーラーの
    室外機の音 うなりを上げる

    熱帯夜 だらりと垂れし 風鈴の
    たんざくにらみ うちわせわしく

    逆光に ホースの静を 向けおれば  虹広がりて 一枚の絵に

  • 八月
    オぺ台で 痛みあまり すがるなら  浄土におわす 父母を求めて

    五時間も 休まずオペに とり組し  ドクターの気迫 我も負けじと

    負うた子に 今はすべてを 世話になる  口だけ母を させてもらって

    松尾まで 暑いといわず 車椅子押す  夫の汗 夕陽に輝く

    送り火の 燃え尽きる時 諸々の  嘆息出ずる 盆も終りて

    盆過ぎて 空に現る 巻層雲行く  
    夏惜しむ 蝉しぐれかな
        
    父の本 没後初めて ひもときて  
    机に向かう 姿懐し

    日照り後の 夕立ち激し 窓を打つ 
    強烈なるエネルギー 心地良きかな

    街の灯が やっと消えたる 午前二時  星の輝き 一層増して

    写真見て 年は隠せず 我の顔  せめて気分は 若くありたし

    花しおれ 外は厳しき 暑さでも  窓から入る 風は秋色

    さまざまな 出会いと別れ  繰り返し 十人十色の 人間模様

  • 九月
    真夜中の ピーポーの音 もの悲しい 車中の人の 無事を祈らん
                       
    長々と 闘病送る 白き顔  鏡に写る 空青し哀し

    久々に 訪ね来し友 老けて見ゆ  人それぞれに 悩みかかえて

    日曜日 小糠雨降る 午後の病室 
    リハビリもなく 身を持て余し

    早や父母の 十七回忌と七回忌  
    遥か病室にて 手を合わせおり

    十七に なりし娘は まだ少し  
    甘えたのに 母が甘え
      
    仕事より 帰りし夫と 若貴の  激戦の話題に ストレス解消

    秋風に乗り聞こえ来る 体育祭の曲  まぶたに浮かぶ 楽しさ一時

  • 十月
    我が本性 真正面から 見つめる時  避けて通りて 我をごまかす

    業深き 我が人生に おののき  我行く道を 教え給え
      
    歯ぐき腫れ 心のしこりの  現われか  鏡に写る 顔の醜さ

    我のため 泣いてくれたる 友ありて 
    その価値もなき 我を恥じる入る

    友退院り 主なきベットの 淋しさよ 
    恋する人との 別れにも似て
     
    松葉杖 たよりに歩き 肩痛め 

    妹の はつらつとして 尊かれ  我の分まで 輝き続けて

    妹の 姑の看病 聞く度に  真似出来ぬ故 激励する

    青春の 思い出僅かで 身障となり  夢に出るのは 十代の頃

    二十一になり 娘の夢 乙女チック  同じ齢にて 我はと嫁ぎぬ

  • 十一月
    小春日の 陽ざしやさしく 足に浴び  オペの傷跡 いとおしくながむ

    日数経て いえる病のうらやまし  とどまるを知らぬ 関節の破壊
     
    晩秋の 北山にかかる おぼろ虹  我がうらめし はかなく映る

    北風に ベランダのボール 踊りいて 
    自転車の吾子の 薄着気になり

    痛みなく 熟睡あとの 軽やかさ  
    今朝は心身 希望が持てる

    即位の礼 ひなの飾りが ほうふつし 
    穏やかなりし 我を懐しむ

    パレードの お二人の笑顔 なお美しく 
    御婚礼時の 華麗さ偲

  • 十二月
    泥酔の 夫にここぞと 暴言吐く  朝目醒めれば 知らぬが仏

    我が歌を 茶化す夫に 教えられ  知らぬ顔して 書き直したる

    年末の 商店街の ニュース見つつ  書く年賀状 あと数枚なり

    年の瀬に 一人で仏器 磨きおり  
    姑は病室で 何を 思わん

    年の瀬の 思わぬ雪に 支障来たす 
    雪国の人の 強さたたえる

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    一年前の記憶 新しく
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